FREEMIUM HACKS!
先週金曜日に、クリス・アンダーソンの新著「Free - 無料からお金を生みだす新戦略」発刊を記念したイベント「FREEMIUM HACKS! (フリーミアムを攻略せよ)」に参加してきました。クリス・アンダーソン氏は「Wired」誌の編集長を長年務め、同誌を数々の雑誌賞受賞に導いてきました。2006年にはEコマースの特性を端的に表して、世界中でベストセラーとなった「The Long Tail」の著者として、皆さんもよくご存じだと思います。
ロングテール理論によると、デジタルの流通システムでは、テクノロジーの発展により、流通コストが限りなくゼロになったため、流通させるものに価値があるかどうかいちいち判断する必要がなくなりました。同時に、ウェブはだれでも参加が自由なシステムであるため、そこに人類の知恵と経験がかつてないほど蓄積された。こうした状況を活用して急成長を遂げたのが、いうまでもなく、グーグルであり、ウィキペディアであり、フェースブックであり、アマゾンです。著者によると、こうした無料化の波は止まることはなく、逆らうのではなく、「無料」を活用しつつ利益を上げる手段を考えることが得策だろうと述べています。本書では、ネット社会において、無料化することによって成功を遂げているビジネスモデルとその法則について幅広く取り上げられています。
本イベントでも、書籍発売に先駆けて、11月13日から10,000部限定で無料オンライダウンロードを実施したところ、2日以内で達成してしまったそうです。その後の動向は、アマゾンの予約ランキング1位を獲得し、21日に発売後は、総合ランキング10位、ビジネス書ランキング1位という結果です。
今後ますます拡大する「無料経済圏」について、様々な示唆に富んだ書籍です。広告関係者、そしてメディア関係者の方が、今後のビジネスモデルを検討していく上で、必読です。
社長退任挨拶
本日の取締役会をもって、社長を退任しました。2001年4月の創業から8年8ヶ月間、皆様には本当にお世話になりました。取締役会の後、社員の皆に挨拶している時、改めて感謝の気持ちが深まりました。社長というものは、長く務めると、腐敗しやすいポジションだと思います。8年8ヶ月務めて、そう感じます。こうして、ブログでも皆さんに退任のご挨拶が出来るのは、常に、日に影に、皆様から叱咤激励があったからだと、感じます。
本日社長に就任した得丸英俊氏は、当社が設立時から大変お世話になっている恩人でもあります。以前、私は彼に「デジパレ・ファーザーズの一人なんだよ」と、お伝えしたことがあります。当社の事業計画を作成して創業に向けて準備に入った時、電通で最初に相談した相手が、当時電通ドットコムの取締役を兼任していた得丸氏です。これがきっかけとなり、電通テック、富士ゼロックス、電通ドットコム、印刷大手三社のデジタル戦略と軸を重ねる形で、デジタルパレットがスタートしました。創業後も、彼には電通マーチファーストの幹部として、創業期の主力案件となるプロジェクトの機会をいくつも作り、サポートしてくれました。
得丸氏は、当社の恩人であると共に、電通グループの中で、そして日本の広告界において、デジタルコミュニケーション領域で、間違いなく最も造詣の深い人物の一人です。そんな彼に、今回社長のバトンを渡せることを、大変嬉しく、また誇りに思います。今後は得丸新社長の指導の下、当社は一層力強く発展し、成長していくことと確信しています。私も今後は非常勤取締役として、当社の発展をサポートしていくつもりです。ぜひ皆様には、引き続きご支援頂ければ幸いです。
明日から私は、電通総研にて、環境立国「日本」の具現化に向けて、取り組んでいこうと思います。日本を、このまま内向きで沈み往く国にさせない。次の世代にとって魅力のある国に、そして世界の持続的発展にとって意義のある国にしていくために、何らかのトライができればと考えています。本ブログも、相応しいトピックがある限り、続けます。引き続き、よろしくお願い致します。
創業からこれまで、本当にありがとうございました。
WPP マーチン・ソレルCEOのAd:Tech講演について
先日Ad:Techニューヨークでのキーノートスピーチで、WPPのマーチン・ソレルCEOが、2010年の広告業界の展望について、"2010 - What's Coming Down the Line?"というタイトルで講演を行いました。ちょうどニューヨーク出張中だったので、直接聞くことができました。ソレル氏はしばしば同様のタイトルで講演を行っているそうで、「いつもの話だったね」との評判も多々聞きました。しかしながら私は初めて直接彼の話を聞いたので、世界市場を視野に入れてダイナミックに話す彼の説明に、強い印象を受けました。ここに彼のスピーチの概要をご紹介しようと思います。
1.今後は中国をはじめとした新興市場が重要となる。例えば、中国の携帯電話のユーザーは5億人だけれども、今後さらに7億人増える市場余地がある。
2.インターネットをはじめとしたニューメディアの大きな伸びも予測できる。現在消費者のメディア接触時間の中で、オンラインメディアの占める割合は25-28%だけれども、オンライン広告市場シェアは13-17%に過ぎない。今年は、物心付いた時からインターネットに親しんできた純粋ウェブ世代(Pure Web People)が初めて大学に入学した年になった。
3.昨年の金融危機以降、クライアントは徹底的にコストにこだわるようになり、広告予算を大段に削減するようになってしまった。従って、広告ビジネスで利益を出すことが極めて難しくなってきた。これ程までにクライアントがコスト削減に取り組んでいる姿は、私の広告人生においていまだかつて経験したことがないレベルだ。世界は全く変わってしまった。現在利益を出しているのは、グーグルやアマゾンなど、世界的にもほんのわずかのプレイヤーに限られてきてしまっている。
こうした環境変化の中で、広告会社は3つの対応が必要だ。
1.欧米市場からアジア市場への戦略シフト
2.市場急減によるオーバーキャパシティへの対応、すなわち大胆なコスト削減の実行
3.変化を拒み、従来メディアをクライアントに売り続けようとする高齢化するマネジメント層の刷新
こうした中でWPPは、次の3分野を強化している。
1.Emerging Markets(中国、インド、ブラジル、インドネシア等)
2.Digital Media(グーグルは、より親しみのあるFrenemyとなってきた)
*Frenemyとは、Friend(友人)とEnemy(敵)の2語の造語。ソレル氏は、かつてから「googleは、広告会社にとって、脅威的な敵であるとともに、広告媒体としては仲間でもあり得る」と言っていました。
3.Consumer Insights(メディア出稿の効果を明確化するデータ分析サービス)
そして、これからの時代のCEOの最重要課題としては、下記が挙げられる。
1.ニューメディアを効果的に活用して、従業員と効果的なコミュニケーションが取れるか?
2.CSR(企業の社会的責任)を軽視するCEOにチャンスはない。CSRは慈善事業ではなく、長期的にブランドを構築するための重要な事業活動である。
こうした課題の解決のためには、イノベーションとブランディングの視点が重要だ。
WPPは、テクノロジーが今後中核となると考えている。そして従来の狭い領域のクリエーティブを信じない。今後は、より広い領域でのクリエーティビティが必要だと考えている。
このまま行くと、雑誌、新聞といったメディアの収益力は、インターネットの普及により、ますます落ち込んでいくだろう。そうした中で、ニューズ・コーポレーションのルパード・マードック氏の考え方、つまり消費者が金を出しても見たいと思うコンテンツを有料で提供するという戦略、には賛同する。本当にニーズのあるコンテンツを提供できるメディア企業のみが生き残ることになるだろう。
世界経済は、若干悪化傾向に歯止めがかかってきているように感じる。今後は各々の市場でLUV型に回復に向かうだろう。欧州はまだまだ回復には遠く、L字型となる。米国は充分に潜在力があり、徐々に回復に向かうU字型の回復。そして中国、ブラジルといった市場は、V字型の回復基調となろう。中国の持続的な成長に疑問符を抱く人もいるようだが、私は全くそう思わない。上海の現在の発展をみると、上海は将来アジアのマンハッタンになるだろう。
私の走り書きのメモを元にしていますので、数字等若干間違いがあるかと思いますが、彼の指摘の概要は以上のようなものでした。当然のことながら、日本の位置づけは、アジアではなく、欧州か米国的なものでした。そして残念な点は、日本市場については、個別にはほぼ全く取り上げられませんでした。これは彼の講演からだけではなく、日本経済がグローバルな視界から消えつつあるのを、最近感じることが多々あります。忌々しきことですし、奮起が必要です。
9月のアドテック東京で、私は「次世代広告会社への脱皮」というタイトルでパネルディスカッションを持ちました。その際の議論をまとめたものが、iMedia Connectionに掲載されましたので、こちらもご参照頂ければ幸いです。
http://www.imediaconnection.com/content/24925.asp
A Seat at the Table V

先週シカゴで行なった、第5回レイザーフィッシュ経営戦略会議「A Seat at the Table」について触れようと思います。今回は、ボブ・ロードCEOが就任して初めての開催であると共に、ピュブリシスによる買収後初となる経営戦略会議でした。ボブ・ロードCEOからは、ピュブリシス・グループに入ること、具体的にはその傘下のVivakiグループになることの意義、メリットについて、そして今後のポジショニング戦略について、説明がありました。ポジショニングについては、非常に明確な指針があったので、ご紹介します。
Razorfish creates experiences that build businesses.
レイザーフィッシュはクライアントのビジネス拡大に貢献し得る顧客体験を創造します。
オンラインメディアを売る会社ではなく、ウェブサイトを制作する会社でもなく、そしてテクノロジーサービスや分析サービスを提供する会社でもなく、ビジネスに直結する顧客体験を創造する会社です。従来のスローガンであった「Invent the digital future」を、より具体的に明確にした形になりました。
SNSの普及、アナログメディアの衰退、携帯電話、スマート電話、廉価なモバイルPCの普及、そしてサイネージ等の新しいデジタルメディアの出現により、従来とは全く異次元のカスタマー・エクスペリエンスを演出できる環境が整ってきました。そうした環境変化に適切に対応する新しいマーケティング・コミュニケーション会社を目指していきます。
デジタルサイネージを活用した、レイザーフィッシュの最新の取り組みについては、下記サイトを参照下さい。当社テクノロジー部門も、「マイクロソフト・サーフェス」を始め、様々な検証を進めています。
http://emergingexperiences.com/
また、デジタル・ブランド・エクスペリエンスの最新動向については、レイザーフィッシュからレポートが発行されました。併せてご参照下さい。
FEED: The Razorfish Digital Brand Experience Report 2009
直接PDFファイルをダウンロードしたい方は、こちらをどうぞ。
http://feed.razorfish.com/downloads/Razorfish_FEED09.pdf

レイザーフィッシュNYオフィス

先程、レイザーフィッシュのニューヨーク・オフィスを訪問し、営業、クリエーティブ、UX、メディア部門の幹部と、近況を交換してきました。特に、昨年の金融危機以降の営業戦略と経営戦略について、意見を交換しました。金融や自動車といったクライアントを多く抱えるニューヨークオフィスは、レイザーフィッシュの中でもいち早くリストラクチャリングに取り組み、オフィスのサイズも4フロアーから3フロアーに縮小していました。組織体制も、よりクライアントニーズに迅速に応えられるように、抜本的に見直したそうです。興味深かったのは、役割毎の組織編成とは別に、ソーシャル・インフルエンス・マーケティングやサイネージ等、戦略上重要なテーマについてタスクフォース的にチームを編成し、その分野の専門家を育成しているそうです。好況で皆が忙しい時には中々手が回らない部分を、将来に向けて戦略的に強化しているようです。
クライアント開拓も、今後引き続き伸ばせる業種、現状規模を守る業種、今後可能性が見込まれる業種と、業種毎に分別し、それぞれに相応しい戦略的な対応を心がけているとのことでした。ニューヨーク・オフィスは、その立地上、金融、自動車の他に、メディアならびにエンターテイメント業界の構成が非常に高いようです。出版社、新聞社、通信社、テレビ局といったメディアのデジタル化戦略を、数多く手掛けています。

ニューヨーク・オフィスは、ブロードウェイに面するビルに入っています。

一昨日のヤンキースのワールドシリーズ優勝を受けて、受付も祝勝気分でした。

戦略プロジェクトの場合には、スタッフ一同が「War Room」と名付けられたスペースに集まり、集中してプロジェクトに取り組みます。

ニューヨーク・オフィス内の風景。
シカゴ、そしてニューヨークへ

今週月曜日に、レイザーフィッシュのマネジメント会議「A Seat at te Table V」に参加するために、シカゴに来ました。シカゴでは一泊の滞在でしたが、レイザーフィッシュ・シカゴオフィスも訪問することが出来ました。そして米国時間の昨晩(3日深夜)にニューヨークに入り、ちょうど今、アドテックNYのマーチン・ソレル氏のキーノートスピーチを聞く機会に恵まれました。45分という短い講演でしたが、世界全体を俯瞰して、広告業界の現状課題と今後の可能性について、非常に明瞭なメッセージでした。長きに渡って広告業界を世界規模で捕らえ、世界最大スケールのエージェンシーグループを構築した人物だからこそ言える、示唆に富んだ説得力のある内容でした。久しぶりに興奮しました。この件は、追ってまたご報告しようと思います。
レイザーフィッシュのシカゴオフィスは、倉庫を改装したビルにあります。場所的には、ちょうどニューヨークのトライベッカのような所で、クリエーティブ系の企業の多い場所です。ハロウィーンから日が経っていないこともあり、オフィス内にデコレーションらしきものがたくさん残っていました。聞いてみると、部署ごとにデコレーション・コンテストを開催したそうです。

レイザーフィッシュ・シカゴオフィス風景。

シカゴオフィスには、こんなレイザーフィッシュが、、、。

壁が落書きスペースになっていました。時々、塗り直すそうです。

ビルのホールのハロウィーン・デコレーション。


