良い広告とは何か

2009年5月3日

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 今回は、最近読んだ書籍「良い広告とは何か」を、ご紹介します。著者の百瀬伸夫氏は、電通の元副社長です。私は、当社を創業する前、電通国際本部に在籍していた際に、2年間ほどアシスタントとしてお仕えしたことがあります。

 当時電通は、米国Leo Burnettへの資本参加、そしてDarcy Macius Benton Bowlesとの合併、日本ではBeacon Communicationsの設立と、これまでのYoung&Rubicamとのパートナーシップによる国際展開を超えて、より踏み込んだ形である資本参加による国際展開を推進している時期でした。百瀬氏は、そうした電通の本格的な国際展開を推進した最大の功労者です。何事にも世界一流を求め続け、実行していく姿を、身近で拝見し、電通のトップエグゼクティブのスケールの大きさ、プロデュース力の凄さを、痛感しました。本書では、そうした真剣な取り組み・経験を基に、本当に良い広告とは何なのか、について赤裸々に語られています。私には、一言ひとことが、著者が直接語りかけてくれているように感じました。

 著者は、良い広告とは、クリエーティブの良い悪いではなく、効率のいい広告でもなく、「効果のある広告」であると定義しています。「効果のある広告」とは、優れた広告キャンペーンを通して訴求対象にメッセージが理解され、好感をもたれることによって売上増に結びつき、利益の拡大に貢献する広告だとのこと。正しく同感です。そのために、優れたクリエーティブが必要であり、正確な効率測定が必要になります。

 一方、広告の効果を測定することは、二つの問題点がネックとなり、なかなか難しいとも指摘しています。一つ目の問題点は、広告特有の時間性の問題です。つまり、広告実施直後に直ちに売上に寄与する効果と、数年、数十年にわたってブランドを大きく育て、それにより中長期的に売上拡大に寄与する効果の二つがあるからです。もう一つの問題点は、マーケティングミックスの他の要素、つまり商品戦略・パッケージ戦略・価格戦略・流通戦略と、完全に切り離して、広告だけの売上貢献を測定することが難しいということです。広告主にとって、直近の売上増に結びつく広告費は経費であり、五年後・十年後のブランド育成に貢献する広告活動は投資です。広告はトップの仕事、と言われる所以です。

 本書でも詳細に紹介されますが、世界的なブランド力を誇るネスレは、ブランド価値の管理を徹底しています。各国のトップが深く関わるのは勿論のこと、スイス本社のトップマネジメントも、定期的に世界各国の広告活動、そして広告代理店の能力を、厳しく監査しています。私も、電通の営業時代に、十年程ネスレのアカウントを担当する機会がありました。その時のクライアントとのグローバルベースでの緊張感は、私の広告人の基礎になっています。

 本書のあとがきで著者は、効果のある広告について、次のように書いています。

 2008年に四人の日本人がノーベル賞を受賞した。各人のコメントを聞いていて、大切なことが含まれていることに気づかされた。
 一つ目は、子供の成長のためには、山や海に親しみ、自然の美しさを感じとる心を育てること。二つ目は、長い研究生活のなかで、優れた指導者や仲間との対話を通じて学ぶことの大事さ。三つ目は、忍耐力。
 「効果のある広告」を考えるに際して、ノーベル賞受賞者の言葉は、極めて適切なアドバイスである。消費者についての鋭い洞察力、深く考える力、優れた仲間との対話、そして忍耐力。、、、

 軽薄なトレンドではなく、広告の素晴らしさ・奥深さの本質を、そして一流の広告人として生きることの真髄を、学びたい方に、お薦めします。

投稿者: Reo Watanabe 日時: 2009年5月3日 22:43 |パーマリンク